山下 秀敏(北海道) vs. 三原 槙仁(千葉)
By Naoaki Umesaki


さて、開催を約1ヶ月後に控えた『グランプリ・神戸』。
その開催フォーマットであるエクステンデッドが、現在どのような環境となっているか、簡単におさらいをしてみよう。

まず、『アラーラの断片』が発売されて間もない昨年の11月に開催された、『プロツアー・ベルリン』。
事前に有望視されていたのは、『アラーラの断片』によって『1マナ3/3』という破格のスペックを誇るタレントである《野生のナカティル/Wild Nacatl》を獲得した緑赤白ビートダウン『Zoo』だった。

そんな事前の予想通り、『プロツアー・ベルリン』において『Zoo』はデッキ使用者率でダントツの1位となり、2日目にも多数の進出者を輩出するのだが、決勝ラウンドに進出した8人のうち6人の使用デッキが『エルフコンボ』で、優勝を飾ったのも『エルフコンボ』と、最終的な結果を見ると『エルフコンボ』の一人勝ちという印象が強い大会となった。

次に、今年の1月に開催された『グランプリ・ロサンゼルス』。
『プロツアー・ベルリン』においては圧倒的なまでの一人勝ちとなった『エルフコンボ』だが、その反動で過剰な対策をされてしまったからか本大会において結果は振るわず、この大会のTop8は『親和』2人・『ウィザード』2人・『緑黒ローム』2人・『ストームデザイア』2人と非常に多彩な顔ぶれとなった。

どうやら、現在のエクステンデッドのメタゲームは『Zoo』『エルフコンボ』を中心としたメタから、それらを押し退けるその他のデッキが台頭してきて、次はどうなるか…といった状況のようだ。
『グランプリ・神戸』の前にも、『グランプリ・シンガポール』などエクステンデッドでの大型イベントが続くが、『グランプリ・神戸』に向けてメタがどう変化してゆくのか興味深いところだろう。

それでは、前置きもこれくらいに、『グランプリ・神戸』を占う上で重要なファクターである『トライアル埼玉大会』準々決勝の様子をお届けしよう。


Game1
先攻の山下は、1・2ターン目と連続で《モグの狂信者/Mogg Fanatic》を展開して、3ターン目には《長毛のソクター/Woolly Thoctar》という立ち上がり。

後攻の三原も同じカードを連打する立ち上がりで、1・2ターン目と連続で《本質の管理人/Essence Warden》をプレイ。
2ターン目に土地を置けずセットランドが1枚で止まってしまいヒヤリとするも、3ターン目のドローで無事に《吹きさらしの荒野/Windswept Heath》を引き、《森/Forest》をサーチして《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》のプレイを宣言するのだが、ここで三原が心理戦(?)を仕掛ける。


山下 秀敏
このまま《ラノワールのエルフ》が場に出ると2体の《本質の管理人》によって2点のライフを回復することになるのだが、何もリアクションを起こさなかった山下に対し、三原は丁寧すぎるくらいに「《ラノワールのエルフ》場に出ていいですか?」と尋ね、山下に選択を迫る。

たしかにビートダウンである『Zoo』にとって《本質の管理人》のライフ回復能力は厄介なものであり、後々殺すことになるなら今の段階で殺したほうがライフを攻める観点から見て良いのだが、《遺産のドルイド/Heritage Druid》《ワイアウッドの共生虫/Wirewood Symbiote》といった『エルフコンボ』の中心パーツに対処するために使わずとっておきたいのが本音。

山下は、考慮の後に《モグの狂信者/Mogg Fanatic》の能力を2体とも起動して《本質の管理人/Essence Warden》2体を除去することを選択するのだが、三原は続けて《ワイアウッドの共生虫/Wirewood Symbiote》をプレイしてターン終了を宣言。

この時の三原の手札は《召喚士の契約/Summoner's Pact》・《樺の知識のレインジャー/Birchlore Rangers》2枚・《垣間見る自然/Glimpse of Nature》といった内容となっており、次のターンにはすぐさまコンボがスタートするぞという体制。
先ほど《モグの狂信者》の能力を使用するかどうか二択を迫ったのは、やはり三原の罠だった。

山下の火力は尽きておらず、三原のマナが無い自身のターン内で《ワイアウッドの共生虫》を《マグマの噴流/Magma Jet》で除去してターンを返すのだが、三原はこの第4ターン目に《垣間見る自然/Glimpse of Nature》を打ちコンボへの突入を宣言する。
《樺の知識のレインジャー/Birchlore Rangers》2連打、《召喚士の契約/Summoner's Pact》からのサーチで《イラクサの歩哨/Nettle Sentinel》をプレイと、クリーチャー展開をしながら《垣間見る自然》の能力によってドローを進めてゆく。
ドローを進める中で三原は『エルフコンボ』の中心パーツを引き当て、《ワイアウッドの養虫人/Wirewood Hivemaster》のプレイによってクリーチャープレイごとに【1/1】トークンがおまけで場に追加される状況となり、その後のクリーチャー展開を《樺の知識のレインジャー》《遺産のドルイド/Heritage Druid》と《イラクサの歩哨/Nettle Sentinel》のマナ製造エンジンが補助するという、凄い勢いで場に数が並び始める状況となる。

更なるクリーチャー展開によるドローを進める途中で《ワイアウッドの共生虫/Wirewood Symbiote》《エルフの幻想家/Elvish Visionary》なども揃い、《ワイアウッドの養虫人》によって生まれたトークンを使用してX=8での《召喚の調べ/Chord of Calling》。
《威厳の魔力/Regal Force》をライブラリーからサーチして、場に出た時の能力で場に出ているクリーチャーの数だけドロー。
その数、18枚。
ついには、2枚目となる《垣間見る自然/Glimpse of Nature》まで打ち、引き込んだ《鏡の精体/Mirror Entity》をプレイしてフィニッシュ出来る状態としたうえで自身のライブラリーが3枚になるまでドローを進め、三原がディスカードを宣言をすると、山下は投了を宣言した。
第4ターン、場に《ラノワールのエルフ》と3枚の土地しか無い状況からの出来事だった。

山下 0-1 三原


■三原のサイドボーディング
IN
3《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》
2《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender》

OUT
2《召喚士の契約/Summoner's Pact》
2《樺の知識のレインジャー/Birchlore Rangers》
1《エルフの幻想家/Elvish Visionary》


Game2
先行の山下、1ターン目は《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》セットから《密林の猿人/Kird Ape》をプレイ、2ターン目には三原のコンボに対して抑止力となる《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist》をプレイと中々に良い立ち上がりだ。

数を連打する三原のデッキにとって厄介なクリーチャーが場に出てしまったなと思いながら見ていたのだが、三原は《樺の知識のレインジャー》《エルフの幻想家》とプレイを進め、その後すぐに《ヴィリジアンのシャーマン/Viridian Shaman》で《エーテル宣誓会の法学者》を除去することに成功。

山下は2体目となる《密林の猿人/Kird Ape》・《モグの狂信者/Mogg Fanatic》とクリーチャー展開を続けるのだが、いま一つ迫力に欠ける感じである。


「魔王」三原 槙仁
三原が《イラクサの歩哨》をプレイしたのに対応して、山下はマナ製造エンジンの御供である《樺の知識のレインジャー》を《モグの狂信者》の能力によって除去するのだが、次に場に登場したのは《ワイアウッドの養虫人》。
続けて2体目の《イラクサの歩哨》がプレイされ、《ワイアウッドの養虫人》が能力によって【1/1】トークンが製造される。 こうして三原の場にはクリーチャーの数が並び始めてしまうと、場で攻めるデッキである『Zoo』としてはダメージが通らない状況となってしまい厳しいところ。
山下は《密林の猿人/Kird Ape》2体でアタックを行うのだが、三原は多くのクリーチャーでブロックした上で、ダメージスタックに乗せてから《召喚の調べ》で《ワイアウッドの共生虫》をサーチして、ダメージ解決前に戦闘に致死ダメージを負っている《イラクサの歩哨》を救助とトリッキーな動きで戦闘を一方的に優位なものへとすると、ゲームの流れは完全に三原のものへと。
この《ワイアウッドの共生虫》はすぐさま《火葬》で除去されるも、三原のクリーチャー展開は続き、《ワイアウッドの養虫人》のトークン製造能力によって盤面がどんどん硬いものへとなってゆく。

山下は《エーテル宣誓会の法学者》《炎の印章/Seal of Fire》と展開するのだが、三原は《炎の印章/Seal of Fire》に対応して《召喚の調べ》で《威厳の魔力》をサーチして9枚ドローと、時すでに遅しの感。

三原は続くターン、《召喚の調べ》によって《ワイアウッドの共生虫》をサーチして場に出ている《ヴィリジアンのシャーマン》手札に戻して、再びプレイすることによって《エーテル宣誓会の法学者》を除去。

場は盤石、手札も豊富、妨害要素は取り除いたとなれば、第1ゲームと同様に《垣間見る自然/Glimpse of Nature》からコンボがスタートだ。
《遺産のドルイド》と《イラクサの歩哨》によるマナエンジン、《ワイアウッドの養虫人/Wirewood Hivemaster》によるトークン製造、《垣間見る自然》によるドロー。山下としては、もう煮るなり焼くなりご自由にどうぞといった状態。

ドローを進めた後、色マナを供給できる《樺の知識のレインジャー》を《召喚の調べ》でサーチしたうえで、《鏡の精体/Mirror Entity》のプレイを確認すると、ここで山下は投了を宣言した。

山下「エルフコンボに対して有効なサイドボードカードの枚数を取ってなかったので、メインはもちろんサイド後も絶望的なのが厳しかったですね。」

【感想戦】
2ゲーム目の中盤、三原が《召喚の調べ》をX=1で打って《ワイアウッドの共生虫》を持ってきた場面があったが、山下はこの《召喚の調べ》に対応して山下は《炎の印章》で場に出ている《ヴィリジアンのシャーマン》を焼いておくべきだった。
その場面において、X=1での《召喚の調べ》で持ってくるものといえば、場に足りてない《ワイアウッドの共生虫》であることは明らかだからだ。
結果、この《召喚の調べ》でサーチした《ワイアウッドの養虫人》によって場に出ていた《ヴィリジアンのシャーマン》を使い回し、《エーテル宣誓会の法学》を除去してコンボスタートとなったが、この《エーテル宣誓会の法学者》が生きていればもう少しターン稼げており、逆転のチャンスが生まれた可能性もあった。

山下 0-2 三原

Result : 三原 槙仁 準決勝進出!


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